環境よもやま話:1

〜PCBだけが悪者?〜

約40年程前にカネミ油症事件がおきました。多くの方々に健康被害が生じ、その原因は食用油に混入されていた毒性の強い化学物質のPCBである事が判明し、政府はPCB全廃の方針を決定し規制法が出来、現在に至っております。
そのおかげさまで、今私たちの身の回りにPCBは存在致しません。
一般の方々でPCBという言葉になじみのある方はあまりおられないと思いますが、私共廃棄物にたずさわっている者にとってはほんの少量混入していても取り扱が困難で大きな問題であります。
PCBのよる健康被害の実態は、食用油の製造過程においてPCBが混入し、当時健康法として油を飲用する事が行われ、PCB混入の油を飲用された方々に健康被害が発症したものでありました。そしてPCBを詳しく調査した結果毒性があることが判明し、全面廃止となりました。
なぜPCBという物質が存在したのか?この点に関しては科学技術の進歩に伴い様々な新しい物質が作り出されその優位性(安定性が高い、使い勝手が良い、コストが安い等)により使用され普及していったものであります。
これらの新物質はPCBだけでなく私たちの身の回りの多くの見える所見えない所に存在します。
ではPCBだけが毒性の高い全面禁止物質なのでしょうか?
そもそもPCB被害がおきた原因はPCBを直接飲んだ事に由来します。
天然自然由来でない化学合成品を直接体内に取り込む事をすれば、PCBのみならず他の色々な物質でも健康被害の起きる事は想像にかたくないと思いますが、最近の例ではアスベスト(石綿)の禁止があります。
アスベストはかなりの昔から使用されていた便利な物質ですが、健康被害があるとして数十年前より段階的に使用等制限されてきました。それが発ガン性が大きく取りざされるといきなり全面禁止(条件付きで一部使用は認められています)になりました。
政府の国民の健康に対する意識の偏りを感じます。私たちの身の回りにあるもの、特に新しく出てきたものに対して真剣に詳細な研究をして頂きたいものです。
また有害性のあるものの取り扱いに関してもPCBやダイオキシンのようにいきなり全面禁止というのも考えものであると思えます。
取り扱いにある一定の方法やルールを設ける事によって(例えばその物質の濃度によって危険度ランクを設け取り扱いや処理方法を定める等)より有意義な運用が可能であると思います。
実際にダイオキシン問題では多くの焼却工場が対策出来ず、閉鎖や休止になりました。皮肉な結果として今や焼却工場の排気ガスより一般の方々の生活や自然的に発生するダイオキシンの方が濃度が高くなりました。そうなると焼却工場だけに規制を行った国の方策に疑問を感じます。
PCBは何十年たった現在も処理が進まずただ保管されているだけ、ダイオキシンやアスベストの処理は許可を持った業者が国に定めた大変手間のかかる方法で処理を行う為とても処理費用が高くなります。
有害物と名が付くものをただ全面禁止にする事は、現実の運用面やコスト面で非常に片寄りのある結果を生み出すと思います。